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ASDその11 -覚醒- [ASD]

生きている。良かった。生きているよ。

ASDその10 -手術-
手術台の上に乗り、仰向けになると身体には緑色のシートを被せられ、両腕に1本、又1本と
点滴の針が刺されていく。
「痛ッ」
と小声で呟いたのが聞こえたのか、
『あぁ、麻酔を先にすれば良かったねぇ、痛いもんねぇ。』と暢気な執刀医のK先生。
「えぇ、お願いします。」
麻酔が注され、するとようやく効いてきたのかだんだんと意識が遠のいていく。

目が覚める。
遠くから電子的なピッピッピッという音と空調の音だけが耳に響いた。
ぼんやりと辺りを見渡す。両側はカーテンで仕切られていて伺うことは出来ない。
頭の上の方に曇ガラスの窓が見える。真っ暗で、もう夜のようだ。
両腕には点滴がなされているようで、幾つもの点滴のバッグがぶら下げられている。
いや、腕だけではない、手の甲、足の甲にも刺さっているようだ。
喉の奥まで人工呼吸器のチューブが入れられているのに気づくが、ぼんやりしているせいか
さほど苦痛ではない。

ボーっと天井を眺めてピッピッピッという電子音を聞きながら、
「あぁ、生きている、手術、終わったんだ・・・成功したのかなぁ・・・」と考えていると
カチャカチャカチャと何かを運んでいる音が聞こえてくる。

すると、看護婦さんがやってきて、なにやらチェックとメモをし、おもむろに
「気がつきましたか?」とICUの看護婦さんが僕の顔を覗きこんだ。
こっくりと頷く。
あぁ、そういえば筆談だったっけ・・・
看護婦さんの手のひらに
「○」を描く
続けざまに
「イマナンジデスカ」と描くと
『11時ですよ』
「コレハズセナイデスカ」
看護婦は一瞬?と言う顔をして、
『あぁ、人工呼吸器?』
『人工呼吸器のチューブ外してもらえるか聞いてきますね。』
『後は大丈夫?』
「ノドカワイタ」
『喉渇いちゃうよね、人工呼吸器つけてるからまだ飲めないけど
もうちょっと我慢して。ゴメンね』
と言い残すとその場を離れていった。

それから又僕は眠ってしまった。

目が覚める。まだボーッとはしているが、さっきよりは気分がいい。その代わりに人工呼吸器が
ひどく気になる。

暫く経つと見たことの無い医師と看護婦さんがやって来て、
『人工呼吸器はずしますね』と僕に伝える。
『深呼吸してー』
と言われるがままに大きく息を吸い、ハァーっと吐き出すとズリズリとチューブ?というか管が
引き出された。さすがに予想外のことでむせった。
息を自分でしてみる。ちょっと喉が痛い。若干傷ついたのだろう。
『声、出してみようか?アー』
「・アー・・ー・・」
自分の声ではないみたいなかすれ声だ。
『人工呼吸器のせいで傷ついちゃってるから暫くはかすれ声が続きますからね。3,4日で元の
声になりますよ』
チューブを外した代わりに今度は酸素マスク?を口に被せられた。
これはこれで何とも息苦しく、何度も自分の手でそのマスクをずらしていた。

そんなことをしているうちに翌日の朝になり、何をするわけでもない、と言うより何もできないと
言うのが正しいのだが、とにかくボーッとしていた。

どの位そうしていただろう、すると父と母が面会にきた。白衣をまとい、マスクをしている。
『よく頑張ったな、無事成功したって。』と父。
「あぁ」
とだけ返事をした。
『ココ(ICU)に来た時、見に来たんだけど、顔の色が悪くて、俺はダメだと思った。』
「勝手に殺すな・・・」
『なんだ?声ガラガラだな?』
「人工呼吸器つけてたからだってさ」
『そうか』
「今、何時?」
『8時過ぎだよ』と母。
「喉、渇いた・・・」
『あー、でもまだ何も飲めねーべ、我慢だな。』と父。
それを聞いていた看護婦さんが、
『あ、もうちょっとしたらシャーベットを持ってきますよ』
『良かったね』と母。
???シャーベットォ~???水じゃないの???と内心思ったが、喋ることすらままならない。
ホントに、ホントに疲れて話すのも一苦労という感じだった。

ほどなくして看護婦さんが薄~いオレンジ味のシャーベットを持ってきて、スプーンで僕の口に
運んでくれた。
その量たるやたった二口程度。でもその冷たい物体が喉元を通り過ぎた時に体中に染み込んで
いくようでとても美味しく感じた。

さらにそれから暫くすると、主治医のM先生、執刀医のK先生がやってきて、手術が無事成功
したこと、経過が順調なので午後には一般病棟に移ることを伝えられた。
そして、執刀医のK先生が自ら傷口の消毒を行った。傷口に消毒液を含ませた綿をポンポンと
塗っていった。
胸骨上端から鳩尾下ぐらいまで手際よく消毒されていく。痛いような、そうでもないような何とも
言えない感触だった。

ICUまでは見慣れた看護婦さんが迎えにやってきて、
『DB8クン、がんばったね』と声をかけてくれる。
でも、何をするにも疲れてしまい、
「ウン」と言うのがやっとだった。

ストレッチャ-に乗せられ病室へガラガラと運ばれ、病棟のナースセンター脇に止められた。
『DB8サン、戻りました』と看護婦が発するとワラワラと他の看護婦さん達が駆け寄り、
オメデトウ、良かったね』と口々に言ってくれ、何だか照れくさかった。

そして、病室へ入るとおじさん達が、
『オッ、帰ってきたね!良かったなぁ』と言ってくれる。皆、良い人たちだなぁ。
ストレッチャ-が僕のベッドの脇に横付けされた。4,5人の看護婦さん達が一緒に来ていて
『じゃ、ベッドに移りますよ』と声をかけられ、
『せーのっ、イチ、ニッ、サン!』と
僕の体が持ち上げられベッドに移された。

病室に戻ると傷口の消毒を行い、それと同時に心電図を取り付けられた。
これは無線でナースセンターのモニターに接続されており、24時間そのモニターに僕の
心電図がモニタリングできるようなシステムになっていた。
そしてもう一つ発見。僕の体、鳩尾の両脇に透明なチューブ(ドレイン)が繋がっていて、
そのドレインは開胸したところから汚れた血を排出させる為のもののようで、その先は
高さ50cm、幅、奥行き15cm位の機械に繋がっていた。

その日はそれから白湯、お茶をちょっとだけ飲んだだけ。不思議とお腹は減らない。

明けて翌日、朝ご飯として極少量のお粥とお茶が出され、美味しくは無いが食べないと
いけないなぁと思い、渋々とたいらげる。その後は又傷口の消毒と問診、体温、血圧の
チェックを行う。

そして、その日の午後に、術後不思議に思っていたことの事実が判明する。
それは、「なんで尿意をもよおさないのか?」という疑問。
これはすぐに判明した。
尿道へ管が入れられていたのだ・・・どうりで尿意をもよおさないわけだ。
管の中を通った尿は輸血バッグのデカイ版のようなものへと繋がっていたのだ。

若い先生がやってきて、
『DB8さん、今からオシッコの管抜きますね~、痛いけど我慢してね~』
『あ、面会の方はちょっと外に出ていてもらえますか?』
と言われ、両親は廊下へと出て行った。
『じゃ、行きますよ~』
ぬぁ~・・・・・何じゃこりゃ・・・・・今までに味わったことの無い痛みが走る・・・
脂汗をかいてしまった。
『ハイ、終わりました』
「あ、ありがとうございます・・・」
『早めに自分でトイレに行ってくださいね。』
「ハイ」
両親が戻ってきた。
『痛かったっぺ?俺もやられたことあるから分かんだ。』と父が言った。
「死ぬかと思ったよ。」
『それは大袈裟だっぺ。」
「・・・」

管を抜かれても管を長時間入れたことにより感覚が麻痺してしまっている。
それから1時間くらい経っただろうか?膀胱は膨れてるのに尿意をもよおさない・・・

ベテランの看護婦がやってきて、
『DB8さん、自分でしないと又、管を入れることになりますよ、これでトイレに行きましょう』
と車椅子が差し出される。
ベッドを起こしてもらい、車椅子へと移る。傷口を無意識に庇い、前かがみの姿勢になってしまう。
ベッドから車椅子、たったの一歩か二歩の事なのに怖くて中々移れない。
転びやしないか?傷口は開かないか?
やっとのことで、車椅子に移り、両足の間にドレインが繋がっている機械を乗せてトイレへ向かう。
機械を右手で持ち上げ、左手には点滴をぶら下げ、よたよたしながら個室へと向かう。
背後からベテラン看護婦の
『若いんだから、しっかり!傷口は開かないから!』と容赦の無い檄が飛ぶ。
鬼!(ToT)

洋式の個室に入り、しばし格闘・・・
出た・・・チョロチョロっとだが自分の力で排尿をすることがこれほど嬉しいとは思わなかった。
用を足し、トイレの出口までを又、ヨタヨタと歩いていき、車椅子に腰を下ろすと
『良かったね~、管入れることにならなくて~』
オニ!鬼!(T_T)

それから数時間後、又トイレに行きたくなりナースコール。
『ハイ、どうしました?』
「すみません、トイレに行きたいんですけど」
『ハイ、分かりました~』
すぐにあの看護婦さんがやって来た。アレレ???車椅子は???
『若いんだから、歩いていこうね。ソレ(ドレイン)持って。』
「え?・・・・・歩いて良いんですか???」
『若いんだから歩けるでしょう。それに歩かないと良くならないよ!』
・・・・・おに!オニ!鬼!

それから2日位はドレインを持ってトイレに行く日々が続いたのでした。

そして、とうとうドレインを抜く日がやってきました。
傷口は縫合ではなく、2.5cm×0.5cmの皮膚に溶けるテープで十数箇所留めてあるのに対し、
ドレインのチューブは鳩尾のところで縫われていた。
カーテンが引かれ、周りから見えないようにされた所で処置は開始された。
パチン、パチンと糸を切る音が響く。
『じゃ、抜くね、ちょっと痛いけど我慢してね~』
ぐぁぁぁぁぁ、内臓が持っていかれる・・・と思うくらいの違和感とドレインが挿入されていた傷口の
痛さで歯を食いしばった。
『終わったよ~』と傷口を消毒している。
もうグッタリ・・・

あぁ、でも、これでやっと自由の身になれたという安堵感が強かった。

続く(はぁ~、長いね)

前回記事で後2回と書きましたが、無理そう。
これを除いて後2回ですね。


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コメント 4

gutta

手術が成功することはわかっていても、成功したことをやっと確認できてなんだかホッとしました。
by gutta (2005-05-25 11:12) 

サンソ

看護婦さん、容赦ないですね。
自分の為に言ってくれているのは分かるけど・・・
こっちは不安なのよ、傷が開いたりしないか?ってね。
自分も、もし手術を経験してこの様な場面になったら思うんだろうな・・・
鬼ってね。
by サンソ (2005-05-25 16:32) 

アキオ

うう、なんだか、自分の内臓が引きずりだされる様な
妙な感覚が残りましたよ。。

やっぱリアルなんでしょうね、、経験談って
by アキオ (2005-05-25 21:04) 

DB8

>ぐったサン
あはは、ありがとうございます。生きてます。生かされてます。

>サンソさん
あの時は流石に自分に余裕が無いから鬼にしか見えませんでしたが、退院が近づくにつれ、
意図が分かり、感謝の気持ちになっちゃうんですよね・・

>アキオさん
ドレイン抜くのは本当にそんな感じです。内蔵を引きずり出される感触。
って引きずり出された事はありませんが、引きずり出されたらそんな感じではないかと。
by DB8 (2005-05-25 22:47) 

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Thomas G.(Thomas G. 2006-07-18 11:47)

When you really trust someone, you have to be okay with not understanding some things.

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